ツレヅレ

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言葉と体系

目をかけてくれている先輩が、私に向かって高名なデザイナーの名前をいくつか挙げた。私は誰も知らなかった。先輩は驚いていた。

私は「芸術が分かるやつ」ということで、その先輩にかわいがられている。寄席や小劇場、美術館へよく連れ立っていく。感想を話したりもする。だから、そういった「知識」は持っているものと思っていたのだろう。

「大学では何を学んでいたの」と聞かれた。私は2年ほど前、教養学部というところを出た。「教養」と言った。そこでどんな勉強をしたの。どんな体系知識を手に入れたの。何も答えられない。もちろん、授業は受けた。言語学、文学、時には音楽。しかし、すべては断片でしか残っていなかった。ふと、道を歩いていて断片を思い出すということはあれど、こういったところでプチ講義ができるようにはなっていなかった。最も熱をあげている演劇だって、まともに語れはしない。漫然と目についた演目を見に行くだけで、腰を据えて学んだことはない。お遊びレベルだ。

とても恥ずかしかった。 このままでは何も成し遂げることはできないと思った。

言葉と体系を獲得したい。